94年11月3日に丹波の高見城山から石戸山にかけて歩いて来ましたので報告します。
前夜の雨も上がり、天気は回復の方向にある。
一年以上前から温めていた「丹波の山に挑戦することにする。実は、昨年もココに挑戦しようとたが、その時はJRの時刻表を見ないで行動したため目的地(JR谷川駅、970円位だったと思う)迄の切符を買ったものの途中の篠山口駅までしか行けず、いきなり敗退したのだった。
JR福知山線(今は宝塚線と言うのだろうか?)は篠山口以北への列車が極端に少ないという事を当時は知らなかった(^^;。
京阪神ワンデイ・ハイク(山と渓谷社)と2万5千分の1地形図の柏原(かいばら)と谷川(たにかわ)を携え、出発。JR宝塚駅で弁当を買い、8時13分発の各駅停車福知山行きに乗り込む。柏原駅まで1時間半の鈍行旅行である(なっ、長い)。
数年前なら武庫川(むこがわ)の渓谷美を楽しめたこの線もいつの間にか半地下鉄化され武田尾駅までの間(たかだか3駅だが・・)は展望も景観もあったのもではない。
しかたがないので前日会社でPUTしたFYAMAの未読の山を処理しながら電車に揺られていく。
武田尾以降、周りの山の色を物色していたが、紅葉にはまだ早いようで少しガッカリ。
途中の駅で特急に抜かされながらも柏原駅に到着。予想に反して綺麗な駅。
ふと見ると『祝・特急停車云々・・』の垂れ幕。どうも最近改築したようである。
さて、ガイドブックによるとココから大新谷(おおにや)までタクシーで10分、歩いて40分とある。
しばらく歩いていなかったので、脚慣らしを兼ねて歩くことにする。
殆ど起伏のない舗装道で準備運動にはもってこいの行程。35分で到着。
はて?。ガイドブックには大新谷というバス亭があるような記述(地図)になっているが・・・。
しかし、ガイドブック通り、左に新井神社を指した標識があるし、間違いは無かろう。
道を左折し登山口となる三宝寺を目指す。
新井神社方面には地元の方と思われる方が太鼓を鳴らしながら歩いて行く。
村祭りでもあるのかとも思ったが、太鼓を鳴らしている人も、めいめいに神社を目指して行く(と思われる)人も何故かスーツ姿である。
結婚式でもあったンだろうか? 神社への道を途中で右折し三宝寺へ。
後方にざわめきを聞き振り返ると40〜50人程度のハイカーらしき集団。ゲゲッ。
あの群れに飲み込まれてはならじ、とそろそろ1ピッチ入れたいと思いつつも先を急ぐ。
三宝寺を抜け、森林生態学舎へ。
どうやらココに野外活動センターのようなものが造られたらしく、イベントが行われている。
後方の集団の目的地がこのキャンプ場なら良いが・・、などと考えながらキャンプ場(と、行ってもテントは作り付け)を抜け本格的に登り始める。
ハイキングコースとして整備されており、砂止めがされ階段がついている。
登りになると歩みがグンと遅くなる。
後方の集団が上がってくる気配はない。やれやれ。
一歩一歩登につれ、柏原方面の展望が良くなる。気持ちのいいコースだ。
尾根筋にでると右が展望台、左が高見城山と書かれた標識がある。
おばさんハイカーが数人、腰を下ろしてお喋りをしている。
私が座る場所は無さそうだ。もうすこし行って休憩しよう。
左右の松林は松茸止めの札がかかっており、ロープが張られている。コースがわかりやすくていい。
少し登ったところの、猫の額程のテラスで1回目の休憩。現在11時前。
西北部の展望が抜群にいい。
この山は名前が示す通りピークに山城があったとのこと。
守にやすく攻めるに難し、の条件を120%そなえている。
時代的に天守閣に相当するものはなかったのだろうが、それでも城に入れば殿様気分を味わうのに十分なところだったろう。
最も下克上から戦国の動乱期の城主には殿様気分など味わう余裕はなかったろうが・・・(実際、この城は信長の命を受けた明智光秀に攻められ落城したとか)。
一息ついて汗を拭って、さあ出発。
やや雲があるものの青空が広がり展望もあり、時折風が通り抜けていく。
この山を選んだのは「正解」だった。
ただ、もう2〜3週間後にすれば紅葉も楽しめたろうに、と思うと少し悔しい気もするがこればっかりは、仕方がない。
松茸止めの札が見えなくなった頃、城の井戸があったとされる場所に着く。
説明の看板によると、黄金の束が6つ7つ埋められている、との唄が残っているとか。
こんな説明を聞かされると、ついつい掘り返してみたくなる。
もうそろそろ、ピークに近づいているはずである。
少し早いが山頂でメシにしよう。が、しかし山頂には数組の家族連れが陣取っており昼食の真っ最中。
狭いピークなので既に足の踏み場もないような状態。現在、11時半。
まだ時間的に余裕があるのでもう少し先へ進もう。
ここ以降はこれといった特徴もない在りきたりの尾根道。
しかし,眺望だけは保証されており、気持ち良く歩くことができる。
なかなか食事を取るのに相応しい場所というのがない。
ようやくいい場所を見つけたと思った所は、山中行程の4分の3程が終わったガレ場だった。
岩に腰を下ろし駅で買ったチラシ寿司をついばむ。水筒の麦茶が美味い。
食べ終わったところで、地図を広げ位置を確認する。
どうやら「賽の河原」のようだ。
ココからは、石戸山までは20分程で着くだろう。
大休止を取ろうと腰を据えたのも束の間、体が一気に冷えてくる。
こりゃいかん、と思いそそくさと出発。
すると5分程でガイドブックに石戸山々頂と紹介されている場所に着く。
なんぼなんでも早すぎる。
それに、石戸山には展望なしと記されているのにココには「展望」と呼ぶに十分な眺めが存在する。
どうやらココが本当の賽の河原で、ガイドブックの方は誤植のようだ。
気を取り直して先に進む。
ガレ場になるとルートが分かりにくい。それらしい場所を探して先を見る。
少し山肌が見える部分に靴跡がある。
昨日雨が降ったことを考えれば、今日誰かが歩いたのだろう。
高見城山以降、誰にも会わなかったのでこのコースは自分一人かとも思ったが、そうではないらしい。
とにかく、道は間違っていないようなので進むことにする。
少し行くと「石龕寺(せきがんじ)へ」との木札や枝に付けられた目印の紐などが目に入る。やっぱり合っていた。
以降は要所に木札と目印があり悠々と歩く。
四畳半程の広さの場所に出る。
右側には電波中継所。正真正銘の石戸山々頂である。
展望はないし休憩には早いし、早々に立ち去る。
ココからは全くと言っていいほど、展望がなくなる。
林の中をズンズン進んでいく。
風が吹くと木々の葉に止まっていた昨日の雨の雫が落ちてくる。
次回からは雨の翌日の山行は見合わせよう、等と考えながら小さなアップ・ダウンを繰り返す。
地図によると石戸山の先は下り一辺倒のはず・・・。
しかし、地図には現れない起伏があるのは山の常である。
気にせず進む。
トレイルがわかり憎い箇所が多々ある、獣道のような所に入っては、それらしい道に戻り目印を見つける。
歩いていると、周囲の梢から鳩より少し小型の鳥がバサバサと飛び立つ。ギョッ。あんまり脅かしてくれるな!。
道が左右に別れている。どちら側にも目印はない・・・。
取り合えず右を行ってみるが、かなり険しい下りである。
足を滑らせて尻もちを突く。腕をすりむいたが大丈夫。
10m程下った所で、道らしい跡が無くなる。違うようだ、戻ろう。
元の二股のところに戻り、左側の道を行く。
空が雲に覆われて来た。現在、14時。
こちら側は細いながらも道らしい道である。
しばらく歩くと目印を見つける。
こっちで正しいようだ。
辺りは杉林。
経済林と言うやつか?。
そのまま歩いて行くと道が少し広くなってくる。
ガイドブックによると石龕寺へのルートは険しい下りだが、ロープや階段が付けられているとある。
早くお目にかかって安心したいものだ。
しばらく下って行くと、また登る。
登りきった尾根を進むと道がプツリと途切れている。
おかしい。
目印のテープを見たのは今さっきだ。
道を間違ったとは思えない。一度、目印のところまで戻ってみる。この下にも目印のテープと紐があったはずだ。そこまで戻ってもう一度進む。 やはり、間違っていないようだ。坂を登りきり、尾根を右に進む。
しかし、無いものは無い。道は途切れている。尾根を左へ行くべきなのか?。
どう見ても左側へは道があるようには思えないが・・・。 5〜6m程、藪こき紛いの事をしつつ左側を林の中を突っ切ると、獣道のような下り加減の細い道がある。道なりに行ってみよう。
列車の走る音が聞こえる。見えはしないものの、確実に里に近づいている。
そうか、そこに加古川線が走っていいるのかと、思いながらも少し安心する。
(加古川線:谷川駅(JR福知山線)と加古川駅(JR山陽本線)間を結ぶ支線)
またルートを見失う。
全く、なんてコースだ!。5m程右に道らしい筋がある。行ってみると案の定、獣道のような道が続いている。更に進むとまたもや目印を発見。やれやれ。
精神的に少し参ってきている。未だ15時前だというのに大分、辺りが暗くなってきた。日は既に視認できる高さにはなく、かつ曇り空とあっては当然か。
雲が少し厚くなっているようだ。午後からは天気が回復するはずだが・・・。
降られては大変だ。今日はカッパを持ってきてはいない。
天気予報を信じたことも確かだが、昨日準備する際にカッパが見つからなかったのだ。
春に部屋を整理した際、置き場所を変更したようだ。
一応、傘は持ってきているものの、獣道程度の道幅しかない樹林帯では使い物にはならない。 先を急ごう。
少し進むとまた道がなくなった。しかし、先程から頻繁に列車の音をい聞いている。しかも聞くたびに音が明瞭になってきている。下界は近い。
よしんば道を間違っているにしても沿線にでるのは確かだ。
さらに進むと木が低くなっている場所があり平野が遠望できる。 ありがたい。
早速、地図を出して位置を確認する。
鉄道の軌道はハッキリ見えている。
あっ、列車が行く。
ローカル線のわりには新しい車体に見える。
右手より軌道の向こう側を道路が走っており、真正面のやや右側で線路と交錯している。
真正面にはこちらに向かって支道が走っている。
手前の両側に尾根筋が見えるところをみると、自分は小さな谷筋をトラバースしている最中らしい。
これだけの情報があれば現在地はわかったも同然だろう。
あった、それらしい地形が!! ゲッッッッッ。なんだココは。
石龕寺への谷筋から尾根2つ分、東に行ったところのようだ。
眼前の軌道は加古川線ではなく、福知山線である。
いつの間には柏原駅の方へズレてきたようだ。
なんてこった。
どうやら石戸山々頂を過ぎてスグぐらいに道を誤ったらしい(ココまでの紐やテープの目印はなんだったんだ〜!!)。どうする?。戻るか?。
今の位置からするとこのまま降りても、道路まで水平距離で500mもない。
石戸山まで戻ると直線距離でも2Kmはある。ましてや、途中で何度もルートを見失っている。戻れる保証はない。気温も少し下がってきたようだ。
降りよう。
かなり険しいが眼下には人家が見えている。藪こきは気が進まないが少しの辛抱だ。水筒のお茶を飲み気を落ちつかせる。地図をポケットにしまい下り始める。と、途端にイバラに弾かれ眼鏡が斜面を滑り下りていく。またもや、ゲゲッ。
私は裸眼視力が0.05程度しかない。
眼鏡がなければ道があってもそれを見つけることすらままならない。 どうしよう。
とりあえず、予備の眼鏡(若干、度が合ていない)をかけて、落とした眼鏡を探す。
斜面をはいつくばるようにして見回す。
あった。
助かった。
これがなければ明日から仕事にも差し支えるところだった。
しかし、この一件で一気に意気が低下したようで、進む気がしない。
どうしよう。
空模様は相変わらずの曇天。1つ2つと雫が顔にかかる。やばい。
もう、戻るしかない。とても進む気にはなれない。
脱兎の如く、今来たであろう道なき道を登る。
あった。ここはさっき通った。急いで引き返して行く。
下って来た時は何度となく道を見失ったルートでも登るとなると一筋に道がついているのがわかる(何故だろう?)。
はからずしも、かなりのハイペースで登って行く。こんなに真剣に歩くのは何年ぶりだろう。
最近はぼちぼちと歩くことに慣れて、本気で歩いた記憶が全く無い。
数年前、表銀座を縦走した時でもこれほど本気で歩いてはいなかったろう(もっもと、こんなペースで歩き通せるハズもないが・・・)。
おや?。道が二股になっている。右は尾根筋で左はトラバースしいるるようだ。
この尾根筋には記憶がない。左へ行こう。
10mも進むと道がなくなった。まずい、間違った。もう、頭は半分パニック状態である。
右側を見上げると5m程上を、さっきの尾根道があるようだ。
林をつっきりながら登る。道に出た。少し進むと右側が少し開けている。地滑りか何かで、崩れた跡らしい。見下ろすと、乗り捨てられた車が見える。車があるということはそこまで林道がきているということではないか?。とすれば下まで降りられるはずだ。 考える。車のところまで滑り降りていくのは可能に思える。しかし、本当に林道があるのか?。
もし無かった場合、ココまで戻ってくるのは至難の業だ。 やめよう。
もうこうなった以上、最も安全と思われる方法を取るのが一番賢明だ。
北から風が吹きつけてくる。寒い。先を急ごう。
見覚えのある道と見覚えの無い道が交互にやって来る。とりあえず今の所は、概ね来た道を戻っているようだ。さっき迷った尾根も過ぎた。
上手くすれば石戸山まで戻り、正しい道を見つけられるかも知れない。
どんどん戻る。一度、見知らぬ道になってもまた見覚えのある道に出る。
一体、今回これまでに何度道を誤ったのだろう?。
まずい。
本格的に、見覚えの無い道に入り込んだ。しかも、全体的には登って行くはずなのでこの道は本格的に下り始めている。しかし,途中に分岐は無かった。え〜い、このまま進め。
もう、引き返しても石戸山にたどり着くのは不可能だろう。 ビバークという言葉が現実味を帯びて目の前にぶら下がっている。
ツェルトなんて気の効いたものは持ち合わせていない(始めから持ってないが)。
泣きだしそうな空模様にカッパもない。
着替え用のTシャツ1枚と申し訳程度の防寒具(超薄手のジャンパー)のみでは、11月の丹波の山で持ちこたえられないのでは?
良くない考えが次々と頭をよぎる。
自然と足が早くなる。
と、目の前に高圧線の鉄塔が。
助かった。
鉄塔には殆どの場合、そこまでの道が付けられているハズだ!。見つけた、火の用心と書かれたプレートもある。このまま降りていこう。どんどん進むと、プラスチック製の階段がつけられている。
やった。
これで道を見失うことは無くなった。 長い下りを延々と降りていく。階段は膝にこたえる。
しかしこの道を進む限り間違いなく里に着く。随分、下ったところで川に出くわした。
階段が途切れた。
背筋がゾクとする。
川を渡るのか?。
川下に向かうべきか?。
川下への道は無さそうだ。
渡ってみよう。
川を渡るとすぐに視界が開け、眼前に林道が横たわっている。 着いた。
地図を取り出し、現在地の当たりをつける。
どうも、石龕寺の谷筋から尾根1つ東に越えた集落の北側のようだ。
現在15時40分。
谷川駅16時52分発の電車には乗れるだろう。家族には余裕を見た帰宅時間を伝えてある。
やれやれである。 もう、雨に降られても傘が使える。傘を用意しよう。
安堵と共に筋肉の緩みきった顔をしながら谷川駅を目指す。
駅に着いたのは16時14分。
16時16分発の電車に乗ることができた。
フゥ〜。
それにしても、間違いに気づいた時点で引き返さずに強行突破を敢行していたら、どうなっていたのだろう? 結果的にそのほうが早く里に降りられたかもしれない。
しかし1つ間違えば・・・・・・。
by たけ・あまこ |